度欲おぢさん的イスラム相談室
第十三相談室 イスラムの寄付行為

 インドネシアにきて特に困るのが寄付です。 インドネシアにきて特に困るのが寄付です。
 寄付も含めて、一戸建ての一般家庭に回ってくる集金には次のようなものがあります。

(A) 日本と同じで当然払うことがわかっているもの
(A-1) テレビの受信料金、(A-2) PLNの電気料金、(A-3) Telcomなどの電話料金、(A-4) PDAMの水道料金、(A-5) 新聞・雑誌の購読料金
(B) 今の日本ではあまりおなじみでないもの
(B-1) ごみ集めの費用、(B-2) 町内会費、(B-3) 守衛さんの費用
(C) 日本ではついぞ見かけないもの
(C-1) 町の行事への寄付、(C-2) 孤児院への寄付、(C-3) 町内のmasjidへの寄付

(A)の日本と同じものと、(B)のうちでもごみ集めと町内会費は一戸建てに住んでいる方には当たり前のことですからは説明を省きます。

(B-3)の守衛さんの費用について、その経緯などを少し説明します。インドネシアでは戦時中に組織された「隣組」の組織がまだ生き残っていてこれをRT (Rukun Tetangga)と呼んでいます。日本でもむかしは「火の用心・カチカチ」の見回りがありましたが、インドネシアではまだ「夜警(Ronda Malam)」が実施されています。青年中壮年の男性達が一晩中、自分達のRTを警戒することになっています。しかし、お金持ちたちは毎日忙しいためこのRonda Malamに出られません。ここで登場するのが守衛さん(Satpam)で、軍隊や警察を定年になった人たちが第二の人生として働いています。この人たちの費用を住民達が払うものです。地域によって異なり、町内会費に含まれていたり、いなかったりします。お住まいの地域でこの費用の支払が必要かどうかは、女中さんか会社の事務員さんに尋ねてみて下さい。

さて、「(C) の日本ではついぞ見かけないもの」が問題です。

(C-1) 町の行事への寄付については自分の勤めている会社やインドネシアに詳しい友人に問い合わせてみて下さい。ときどき隣組の組長(Kepala RT)が私腹を肥やすためにやっている場合がありますから、注意して下さい。
(C-2) 孤児院などへの寄付は、一律「お断り」としておくのが無難です。一般的に言って、公認の寄付だと組長(Kepala RT)のサインの入った許可状を必ずもってきます。許可状のないものには、「定期的に決まった孤児院に寄付している。ご苦労様」といって「玄関払い」してしまいましょう。遊ぶ金欲しさに若い子達が孤児院の寄付の表を盗みだし、まじめなふりをして寄付を募ることが多いのです。もし、余りにしつこいようでしたら、Kepala RTやら隣近所のボ−イさんなどに助けを求めて下さい。
(C-3) あなた自身がムスりムでなくても町内のmasjidへの寄付をすることは全く問題ありません。あなたの家の女中さんやボ−イさん、運転手さん達が近所のMasjidに世話になっているからです。日本でもお寺には名前があるようにMasjidにも名前がついています。Masjidへの寄付が回ってくるときは当然masjidの名前とKepala RTの許可状があります。一年一回数万ルピアでしょうから、払っても問題ないと思います。ただし、このお金は会社に払い戻し請求できるものかどうかは疑問です。

 また、ムスりムにはザカ−トという名前の一年一回のふたつの供出義務があります。
 Zakat Fitraと呼ばれるものは、一人あたり米3リットルで大した額ではありません。これは食うにも事欠く「赤貧チルドレン」ならぬ極貧の人たちのために供出するものです。
 負担の大きいのはZakat Maalと呼ばれるもので、一年間ため込んだ財産の2.5%を供出するものです。ため込んだ財産と言っても、余剰になって退蔵されている分にかかるzakatで、所得税のように収入の全額にかかるものではありません。また、余剰資金を投資に振り向けた場合には、資金の有効利用となり、この額にはかかりません。この2.5%がかかる部分は「流動資産」が多いようです。余剰資金の蓄えがまったくない筆者にはこんなことを心配する必要がありませんので、興味をお持ちの方はご自分で調べてください。
 個人でZakat Maalを払うのだから会社でも損益計算書の純利益にこの2.5%がかかってくるはずです。インドネシアの会社の利益処分案の中で、支出としてzakat 2.5%分と書かれているのでしょうか。

 イスらムでは、このように余剰資金にしつこく課税し、富が一部に遍在したりしないように、少しでも社会に還元するようにしているのだそうです。このような経済運営などの原則が宗教の中に盛り込まれているというのがほかの二大宗教にないイスらムの特徴です。

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頁作成 2009-09-25
校正 2016/09/11

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