インドネシア不思議発見
46話 インドネシア人の脳みそ

 こんな題名を付けると、「ははあ、夢蛇悲殿はまた何かインドネシア人の悪口を言うのだな」と想像される方が多いと思います。そうです。半分は当っていますが、半分は間違えていますね。まずは「インドネシア人の脳みそ」というジョークがありますのでそちらを先に読んでから戻ってきてください。
 2000年後半に、「話を聞かない男、地図が読めない女」という本が日本でベストセラーになりました。もちろん筆者も2001年1月にインドネシアに来るときに成田空港で買い求めてジャカルタまでの七時間くすくす笑いながら読み終えました。

 この本が売り出されたのと前後して、「よろずインドネシア掲示板」で、インドネシア人の仕事に対するものの考え方や不注意さに腹を立てた人が、インドネシア人に注意するためにはなんと言えばよいかという討論がなされていました。

 この討論の中でチェモンさんが提唱した
     Kamu mesti mencari akal.
 は、素敵な表現ですがインパクトがありません。
 口の悪い夢蛇悲殿は
   Pakailah otakmu!
 あるいは、もう少し穏やかな表現で
   Tolong diperhatikan ナントカ
 などとといっています。 何度もおなじ間違いを繰り返すと、ついにブッチギレて、
   Kapok loh! Aappa ini? Bego kamu !
 なんてのも機関銃のごとく出てきてしまいますけど、これは使わないほうがいいでしょう。 でも正直な話、こんなこと言っても無駄みたい。だって、工夫できる人にはこんなことを言われないし、工夫できない人に無理強いしても、できないものはやっぱりtidak bisaなんですから。
 他の方からは、
    Cobalah Cara Lain , supaya lebih baik , lebih ganpang .
 や
  Pak memikirkan jam kemacetan dan sekali-sekali berusaha cari jalan lain ya!
  という礼儀正しい言い方を教わりました。 しかし、やはりみなさんキレてしまうと
    Pake Otak!
  になっちゃうようです。インドネシア華人のみならず、プリブミの間でも同じような表現が使われています。 Pake Otak!を使う対象になる人たちは、何度注意してもこちらの意図は全く理解できませんから、こう怒鳴っても役には立たないのです。
 この討論に続いて、なぜインドネシア人はパケ・オタックをしないかに論点が移りました。他力本願で、会社のためにパケ・オタックをする人たちが極めて少ない点です。 筆者は、昔から、「頭を使うと疲れるから」という理由をあげていますが、友人には「インドネシア人もいろいろと頭を使っている」と指摘され、よく観察すると確かに「気は使って」います。仕事の電話でも、「家族は元気か?心配事は解決したか?」などなど仕事には直接関係ないことばかりしゃべっています。ですから、経済規模に対して電話が圧倒的に不足していて、電話網のインフラが需要に全く追いつきません。ですから、インドネシアのほうが日本より先にケータイが普及し始めました。
 日本人とインドネシア人のこの大きなちがいがどこから出てきているのかが不思議でした。最近、この話の最初にあげた「話を聞かない男、地図が読めない女」に掲載されている「男脳・女脳テスト」を男女に対して行った結果を集計してみて驚いたことは、インドネシア人の過半数は「女脳」の持ち主であるのに対して、日本人の過半数は「男脳」の持ち主でした。
 インドネシア人が議長をする会議では、何も決まらず、誰かが延々と何の役にも立たない演説をぶっているだけ。聞いている人たちもだんだんと飽きてきて、隣近所の人たちと自分たちが関心を持っている話題をこそこそと話し出します。
 また、発言の内容もきちんとロジックの通ったものでないばかりか、現実をよく見ていないため自分の経験を元にして、現実とは異なることを述べたりします。発言に対しては賛成も反対もしないで、そうだ・そうだ、と聞いているだけです。また声の大きいほうの意見が通ったりするのです。こう言う方式をムシャワラと呼んでいてこれにもジョークがあります。

  この会議のスタイルをどこかで見たような気がしました。そうです。ほとんどおかあさんばかりの小学校のPTAでした。ということは、…………。
 ご明察。主婦の井戸端会議のスタイルだったんです。 インドネシアの大の男がなんで井戸端会議風になるのか、ずっと不思議に思いこれは熱帯地方の国民性によるものであろうと推定していましたが、実は「女脳」の持ち主という遺伝的形質によるものであったのです。
 そういえば、表面をつくろうだけで実質的にはなにもしない、変化を求めない、人に対して優しい、なにかをしゃっていないとストレスが取れないという傾向は女性的といわざるを得ません。  インドネシア人は平均して日本人より「女脳的」性向をもっています。インドネシア人を人種別に分けて調べたところ、ジャワでは女性に女脳の持ち主が多いのに対して、おもしろいことに、スマトラでは逆で女性のほうが男脳の持ち主がおおいことでした。そういわれると、スマトラの女性は男性をしのいでしっかりしていますよね。  さらに、日本人では男脳的脳の持ち主のトップ2が女性であったことです。これは驚きでした。  集計データとその分析結果は別ページにあります

 この集計データからはこのような結論が導き出されますので、ご利用ください。

  1. インドネシア人と仕事の話をする場合には、相手がオトコであれ、主婦の井戸端会議に参加していると思うこと。
  2. 何でもかまわないから相手の興味を引くようなものを目の前にぶら下げることで、自分の不利さを井戸端会議の席上回避することができる。相手の目の前にぶら下げるものは「現金」だけではないことを心しておく。
  3. 特にスマトラ出身者の場合には、会議の内容を奥さんに知らせること。そっちの方が話が早いからである。

 中東のイランでも、ヨルダンでも、リビアでも仕事上この「井戸端会議」ばかりでした。ということは男性が女性的な脳を持っている地域にイスラムが広がりやすいという傾向もあるのではないでしょうか。

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2001-03-05 作成 ジャカルタにて
2002-07-30 更新 読みやすく改訂
2015-03-05 修正
2023-04-23 リンク追加 

2023-06-25 リンク追加

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