嗚呼、インドネシア |
第59話 インドネシア人と日本人の感じ方 |
インドネシアで暮らしている読者の皆さんは、毎日インドネシア人と日本人の感じ方の相違を感じていることと思います。 経済や歴史的な社会環境がインドネシアと日本では大きく異なること、常夏の国と四季のある国という自然環境も異なります。滞在が長くなればなるほど、インドネシア人と日本人の生活態度のちがいはこれらの相違点によるものと理解できるようになってきます。 しかし、ここ三十年余りの観察から、どうしても排除できない点がいくつか出てきました。 この問題点はしばらく解決できなかったのですが、一冊の本がこの解決に役立ちました。それは、妙な題名の話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く: アラン ピーズ, バーバラ ピーズ著という本でした。 この本を読んで、男女間の感じ方の違いに、はたとひざを打ち、さらにはインドネシア人と日本人との違いを明らかにしたのです。 アンケート調査の数値が高ければ高いほど女性的な感じ方・考え方をし、低ければ低いほど男性的な感じ方・考え方をする傾向にあるようにこの本の中にあるアンケートは作成されています。すなわち数値が高いと脳の特性が女性風であり、逆に低いと男性風であるということになります。 このアンケートをインドネシア人と日本人の男女の友人たちにやってもらいました。2001年5月にアンケートの結果をまとめて、分析を行ったところ興味深い結果が出ました。 男脳・女脳テストの結果発表です。テストの対象となった人たちのほとんどは大卒の事務職です。 さて、アンケートは今日まで40人に行いました。その結果からみると、脳の男女指数は、日本人のほうがやや男性的であることがわかったと共に、巷で言われている、スマトラの人はジャワの人に較べて男性的である、という話はこのテストからは裏づけが取れませんでした。たぶん、後天的な教育が大きく影響しているものと思われます。次の表はテスト結果のデータです。 |
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表-1アンケート調査結果
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集計したサンプルの数値集計は次の通り。 |
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表-2 集計数値からの頻度表
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サンプル数の違いを補正すると次の表のようになる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
表-3 補正した頻度表
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比率にすると | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
表-4 性格の傾向
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表-4から見ると、インドネシア人の半数は男女を問わず脳の特性が女性的(女性脳)であり、日本人の半数以上が男女を問わず脳の特性が男性的(男性脳)であることがわかります。 表-1から見ると、スマトラの部族であるバタック人とミナン人は男性が女性脳を持っている人が多く、女性は男性脳を持っている人が多いという傾向が出ています。現地で暮らしてみると、これらの部族の男性からはこのような傾向を感じます。 また、バタック人男性が作ったインドネシアで有名なラブソングではガラス細工のように壊れやすい男性の心を歌ったものがたくさんあります。Rinto HarahapやEddy Silitongaの歌詞を吟味してみてください。きっと「そのとおり」と思われることでしょう。 ミナン人は母系相続の習慣があるとともに女性単独でも遠くまで出稼ぎに行く勇気があることからそう思います。 調査対象にした日本人はインドネシアに滞在していたり、長期滞在経験のある人たちばかりでしたので、彼らの特徴は日本人を代表しているとは断言できませんが、興味ある傾向が見つかりました。 (1) 女性に男性脳の持ち主が多い。これは温帯・亜寒帯の人たちの特徴かもしれない。 (2) 男女とも点数ばらつきが大きい。 これは日本人が異民族の混血であることを示してしているのかもしれない。 特に最も男性脳を持っている日本人女性の二人はインドネシア人と結婚しています。確かにこの二人の行動を見ていると直情的な男性的なパターンが見られます。また彼らの家を訪問してみても夫婦間の軋轢の片りんもみられなかったので、彼らの間にはジェンダーの問題は発生しておらず幸せな生活を送っているようでした。こういう夫婦は「よく耐えられる旦那が偉い」と思ってしまいます。 この事実に気づいてから、世界のあちこちに行って人々の態度を観察してみたところ、男性が女性的な感じ方や考え方をする地域はイスラム地域に偏っているということがわかりました。中欧と北欧では一般的に男性は男性脳、女性は女性脳をもっていますが、アラブ地域では異なります。 アラブ諸国でも地域によってこの傾向はかわりますが全体的にみるとそれほど変わりません。たしかに中東の男性たちに会議をさせると井戸端会議のようにいつまでたっても結果が出ず、そのうちなんとなく結果が決まってしまうことから、彼らは女性脳の持ち主であることがよくわかります。 外国人は顔つきだけから判断してはいけません。怖い顔をしている人たちほど心が脆いのです。 井戸端会議がだらだら続くのはインドネシアでいうところのムシャワラという方式の影響が残っている非先進国だからだともいえるのです。先進諸国ではこのような時間の無駄遣いは決してしません。それは社会を仕切っている男性が男性脳の持ち主であるということが大きな理由を占めていることがわかりました。 最後に。 このように点数を振って分析すると、「点数の多い方、少ない方のどっちがいいの」とすぐに尋ねてくる人がいらっしゃいます。 筆者は「どちらがよい」などということについては全く関与しません。良い悪いではなくて、読者のあなたの好き嫌いで判断してもらえばいいだけです。 人生上の判断基準は「よしあし」ではなく「好き嫌い」であるべきだ。 仲のよいご夫婦を見ていると、長続きしているカップルは、片方が男性脳、もう片方が女性脳をもっているケースが多いことがわかります。夫が女性脳で妻が男性脳の場合「かかあ天下」のカップルですが、それを感じさせないカップルがほとんどです。さらにこの場合、セックス(生殖器による分類)とジェンダー(脳の性格による分類)が矛盾しているといいますが、ほとんどの場合には夫婦間で深刻な問題がありません。うまく協調していると言えるでしょう。性同一障害とは「障害」になっているからこそ解決すべき問題になるのであり、セックスとジェンダーが異なっていても問題がなければ幸福な夫婦生活を営むことができるでしょう。数値からみたらこのような夫婦は離婚する可能性が高いのですが、お互いに好きで結婚したのならおいそれとは離婚することにはならないでしょう。 だから、すべからく、人生上の判断は「好き嫌い」で行えと申し上げているのです。 |
2009-09-20 作成
2009-09-22 追加
2015-03-17 修正
2023-07-19 修正