嗚呼、インドネシア
32話 トロウラン遺跡
遺跡めぐり その6


3.6 チャンディ・ティクス Candi Tikus S7 34'18.3" E112 24'12.7"
  ティクス寺院(Candi Tikus)は行政区画ではモジョクルト県、トゥロウラン郡、トゥモン村、字ディヌクに位置し、バジャンラトゥー門から南東500mの地点にある。
 この寺院はモジョクルト県令であったR.A.A.クロモジョヨ・アディネゴロによって1914年に発見された。当時トゥノム(Tenom)地域とその周辺はねずみの害に襲われていて、駆除しようとするとネズミ達は毎回きまってとある盛り土の上にある穴に逃げ込んでしまった。県令の命令でその穴を掘り進んでみるとその内部は建築物であったのがわかった。このティクス寺院は1984年から1989年にかけて復元された。全般的に見ると、地表から約3.5m下がった位置に作られたこの構造物は沐浴場の構造をしていることがわかった。それゆえ、床面まで降りるためには北側にある階段を使わざるを得ない。
 構造物の平面は22.5m x 22.5m の正方形で、全高は5.20mである。主要構造物、テラスと池の構造材はレンガであり、マカラ(Makara=頭が野獣の形をした古代の彫刻)と紅白の蓮の彫刻が施された水の吹き出し口には安山岩が使われており、噴出し口のうち19個はトゥロウラン神像保護事務所に保管されているとは言え、この吹き出し口は46個存在する。吹き出し口以外には、導水路が主要構造物の裏側にあたる南側、に、排水路は進入階段付近の北側の床上にある。主要部分は、8本の塔がある第一テラスと8本の塔のがあり、その角は基礎の角と同じ向きにある第二テラスに囲まれた中心に位置している。
 建築的視点から見ると、ティクス寺院は、マハメル山を中心とする宇宙の概念をモチーフにしたと想像される。同山の頂上には何体かのデワが鎮座していて、マハメル山から流れ出る水は聖なる水アムルタと理解できる。マハメル山が聖なる山であるという概念はヒンドゥー教と仏教ではよく知られており、ティクス寺院はヒンドゥー教と仏教徒によって聖なる場所とされた沐浴場である可能性が極めて高い。それゆえ、主要構造物はそれよりも小さい八つの峰で囲まれた主峰があるかのように形作られている、上部に行けば行くほど小さくなる構造物であるティクス寺院はマハメルの複製あるいは象徴を構築している。
西側から見た全景
南西側から見る

修復前1983年当時の状態

修復作業中

1989年当時の復旧前の状態

修復後水を張った状態

復旧前の状態

レンガの撤去作業中

レンガの積み立て作業中

修復後水を張った状態
筆者註
この遺跡が発見されたときには小高い丘の下に埋もれていたということであるから、マジャパヒトが滅亡した直後に火山の大噴火があったのかもしれない。ジャワ島の王朝の興亡は火山の噴火と大きな関係がある。

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2007-05-19 作成
2015-07-10 修正
2016-08-23 更新

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