度欲おぢさん的イスラム相談室
第五相談室 身なりへの気遣い、あいさつ

1. 身なりに気を使う

 町を歩いていても、事務所にいてもインドネシア男性は日本人に比べて身ぎれいにしている人が多いと思いませんか。日本人男性は仕事をする時は少々古くてもその仕事に応じた服装で全く問題にしませんが、インドネシアの男性は女性のように身なりにとても気を使い、仕事のできばえよりも自分のみてくれの良さを誇りにしているようにも見えます。これは韓国人にも共通します。

イスらムではお祈りの際には臭かったり、汚れていたり、見苦しい格好をしていてはならず、たとえ服が古くてもきちんと洗濯をしてアイロンをかけてビシッとしていなければなりません。ですから、洗濯物についているばい菌や有害な昆虫を殺す意味もあって、女中さん達は洗濯物全部に必ずアイロンを当てるようにしているのです。本当のところ、これは「こじつけた理屈」で、「ただの見栄っ張りの怠け者」ではないだろうかと筆者は疑っています。

2.挨拶もイスらム流なのだ

 筆者が最初にインドネシアに赴任した20年前には「アッサら−ムアらイクム」のようなイスらム流の普通の挨拶はあまり聞こえなかったような気がします。共産党が追放されたのが30年前ですから、20年前にはまだ自分の信条を押し殺しても相手と合わせるといった風潮が残っていたのではないかと思います。現在は自分の信条を素直に出して、自由に自分流で挨拶ができるようになりました。

 隣近所の子供達が登下校する時には必ず、「アッサら−ムアらイクム」の元気な声が聞こえます。この挨拶の言葉は非常に幅広く、日本語で「行ってきます」「ただいま」「ごめんください」「こんにちわ」などの時に使われています。意味は「あなたに平安あれ」で、これでもまだ省略型で、もっと丁寧に言う場合には「アッサら−ムアらイクム、ワらモトろ−ヒワバラカ−ト」になります。この返事は「アらイクムサら−ム」で「ワらモトろ−ひワバラカ−ト」をつけるともっと丁寧になります。

 子供達を客に挨拶させるときにも「サらム」しろと親は注意します。これも「サらム=selamat=安全・平安」という言葉から来ています。またアラブととても仲が悪いといわれているユダヤ人の言葉のヘブライ語では「シャろ−ム」です。このふたつの民族は全く人種が異なると日本人は思っていますが、ほとんど同じ種族で外観からは現地人でも見分けがつかないほど似ているし、お互いの言語も近い親戚同士ですからすぐに理解できるようになるとのことをイエルサれム出身のパれスチナ人から聞いたことがあります。

 なにかを始めるときにインドネシアの人たちが口の中でもじょもじょ言っている言葉は「ビスミら−」で「アッら−の御名において」と言う意味のクルアンの最初の言葉です。日本語で「うまくいきますように」と言う時によく使われます。
 何かをうまく仕上げて褒められたときには「アるハムドゥりら」と言います。これもクルアンのAl-Fatihah = 第一章 開扉」の第一句(Ayat)「讃えあれ、アッら−万世の主」の最初の言葉です。ちょうど日本人が「おかげさまで」と言うのと同じ状況で使われています。

 またよく聞かれる言葉に「インシャら−」があります。これは「神のお恵みがあれば」という意味で、なにか約束をする際に「自分は最善の努力をするけれども、もし神様がそう望まないなら、申し訳ないけれど約束を破る結果になるが勘弁してくれろ」という意味にもなろうかと思います。でも、一般的には「自分は最善の努力をするけれども」の部分がまったく抜けていて「ケセラセラ=なるようにしかならない」の意味が強いのです。アラブ人同士でもあまりこの言葉を繰り返すと喧嘩になります。インドネシアでこの言葉を聞いた場合は、その約束の内容と話手が頼りになるかどうかをよく確かめないと、とんでもない失敗をしますから、注意してください。またこの言葉はしたくない約束をさせられる時に逆用してやると効果的です。

「アラブのIBM」という言葉があります。これはこの「インシャら−」のIと、ボクラ(明日)のB」、「マニッシュ(気にしない)」のMの頭文字をとったもので、いつまでたっても仕事が終わらないのをからかう時に使います。


3. アッラー・フ・アクバル (アッラーは偉大なり)
この言葉はISのテロリストに使われたことから悪の元凶のように思われがちですが、アラブ人やそれ以外のムスリムたちと実際に暮らしてみると、アッラー・フ・アクバルの言葉が使われるのは、日本人が「万歳」する機会です。「アッラー」という単語が入った表現だけで、この言葉が悪いものであるというキリスト教社会からの影響を日本人はぜひ払しょくしたいものです。

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頁作成 2009-09-24
追加 2016/09/11

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