嗚呼、インドネシア
60話 ジャカルタからバンダルランプンへ

 スマトラ島最南端に位置するランプンはジャカルタからそれほど遠くはないが、ジャカルタにすんでいる日本人にとってはあまり知られていないのでここで紹介しよう。一度バカウニまで行ってみると、スマトラがいかに広々しているかがわかるだろう。

 ジャカルタ市内からはいくつかのバスターミナルとガンビル駅からバンダルランプン行きの直通バスが出ている。
 ここでは直通バスではなくメラクとバカウニで乗り物を乗り継いで行く方法を紹介しよう。

 ジャカルタのプロガドゥン(Pulogadung)、カリデレス(Kali Deres)、カンプンランブタン(kampung Rambutang)バスターミナルからメラク(Merak)行きのバスが出ているので、これらのターミナルのどれかに行って、そこからの始発バスを利用すると必ず座れるし良い座席を選べるのでおすすめ。
 もし時間を短縮しようとするなら、クボンジェルク(Kebon Jeruk)の高速道路料金所の西側の高速道路沿いで待っていると、メラク行きのバスが止まってくれる。ただし、この高速道路を走る大型バスには、メラクのみならず、途中のセランどまりのバス、セランから一般道を通ってパンデグランやラブアン行きのバスもあるので、乗車前に行き先を確認しておくことが必要だ。 

 バスによって停車する町や停留所が異なるが、クボンジェルクから二時間程度でメラクのバスターミナルに到着する。バスターミナルには「スマトラ方面」の表示板があるのでそれに従って進むと連絡船の切符売り場があるのでそこで乗船券を買う。
連絡船には大型自動車も運べるフェリーボート(kapal feri)と旅客だけの高速艇(Kapal Cepat)がある。バカウニ(Bakau Heni)までの所要時間はフェリーだと2〜3時間、高速艇で約一時間である。一日32便あるフェリーは夜間も運行しているが、高速艇は午前七時から午後五時までの運行となっている。この時間帯以外はフェリー利用になる。自家用車で行く場合は、指示板どおりバスターミナルに入る手前を右に曲がり、フェリー乗り場に向かうと、料金所があるのでフェリー代をここで支払う。運転手の運賃は自動車のフェリー料金に含まれているが、それ以外の乗客は運賃を取られる。
 フェリーターミナルには食堂があるが、インドネシア料理のみである。
 フェリーは瀬戸内海航路を走っていた中古船であるから、あちこちベコベコ・ボロボロである。床は滑りやすいので歩行注意。
 高速艇はシンガポールとバタム島を結んでいたボートの使い回しだという、グラカファイバー製の船体をもつ定員200人の大型ボートである。
 高速艇は船尾に近いキャビンに座るのがよい。船首に近いキャビンだと、うねりを乗り切る際に上下動が激しく船酔いしやすいからである。ちなみに高速艇は時速70kmほどの速度で航行するから風力1程度でも揺れがひどい。

メラク港 (2001-6-10)

第三桟橋

第四桟橋

メラク港全景

2000-6-6飛行機の中からメラク港付近とクラカタウ島。手前はチレゴン半島で煙が出ているのはスララヤ(Sularaya)火力発電所。

 フェリーの内部には売店と食堂があるのだが、船内では行商人が大活躍です。こんなものがある。
 お菓子、飲み物、ご飯、カップめん、ジャムウ、果物、アイスクリーム、新聞、雑誌、コーラン、バッグ、おもちゃ、計算機、ポールペンなどの事務用品、ねじ回しなど、その他日用雑貨。まるで「歩くスーパー」だ。
 こんなものをわざわざフェリーの中でなんで買わなきゃなんないんだろう、と思うのは都会人のあなた。乗客の大半は田舎の人たちですから、目新しい物ならなんでも商売になるのでしょうね。
 乗客がまばらな下甲板では、売春、強盗、傷害などの犯罪行為も行われています。庶民の生活がそのまま持ち込まれていると言ってよいほどです。

 海峡の中ほどに山下奉文大将が財宝を隠したといわれるサンギアン島(Sangian)があります。写真はサンギアン島東側海上から。(2000-12-11)

この海峡で高速艇は、これでもか、これでもか、とぶっ飛ばして進みます。時速70kmは出ているでしょう。背景はバカウニ港です。(2001-6-09)

高速艇の乗客たち。(2000-12-11)

女子大生、だそうです

帰省の兵隊さんたち

2000-12-09のバカウニ港の高速艇桟橋です。現在は港の中央部に移動してしまいました。右手に係留中の高速艇が見えます。



2000-06-06 航空機から バカウニ港は島と島の間を抜けた岬の先。後ろはクラカタウ諸島。

 バカウニは「馬鹿・ウニ」と言葉を切らず、バカウ・フニと切ります。マングローブの林という意味でBakau Heniが正しいつづりです。
 フェリーターミナルから出ると、ランプン行きのバスが待っていていて、客引きが「ランプン、ランプン」と呼びかけてきます。このバスはバンダルランプン市内を通らずにバイパスを抜けて市内の北端にあたる位置にあるラジャバサ(Raja basa)ターミナル行きです。バスには冷房付きと冷房なしのものがあります。街道を走るのですが大気汚染はそれほどひどくないので冷房のないバスでも問題ありません。またTravelという名前のミニバス(ワゴン車)がありこれは目的地まで運んでくれますので、乗り換えが面倒な場合はこれを使うと便利です。

 バカウニから乗合バスで約二時間。バンダルランプンの町に着きます。途中休憩はありませんので出発前にトイレを済ませる必要があります。

 バンダルランプン(Bandar Lampung=ランプンの町)市はタンジュン・カラン(Tanjung Karang=サンゴ岬)町とトルク・ブトン(Teluk Betung=大浦)町で構成されていてその東側にパンジャン(Panjang=長町)町が隣接しています。下の地図で「バンダル・ランプン」と書いてあるあたりから南側がトルク・ブトンでその北側がタンジュン・カランです。

 ですから、バンダル・ランプン市内のどこに行くかによって、このバスから降りる場所が異なります。地図上Panjang Entranceとある、街道からパンジャン町へ分岐するところで下ろしてもらえばトルク・プトン方面には便利です。ここからはアンコッ(Angkot)を使います。
 またパンジャンのバスターミナルにはいるバスもたまにあります。
 タンジュンカランに行くには、地図には示してありませんがSimpang Empatと呼ばれる交差点で降りるとタンジュンカランの中心にある駅まではそれほど遠くありません。ここもアンコッ利用です。
 バカウニ発のバスは更に北に進んで地図にあるラジャ・バサ・(Raja Basa)バスターミナルに入ります。ここからはタクシーが使えます。
 町からかなり遠いので町に行くには終点まで行かずに上記の地点で降りるのが便利でしょう。このターミナルのミー・アヤム(Mie Ayam)はうまいのでお試しを。味の薄い鶏肉をそれ自身味がある中華めんにうまく合わせている。

 高級ホテルはトルク・ブトン地区に集まっています。

 尚、ランプンの飛行場(Tanjung Karang Air Port = Bandara Raden Intan)はラジャ・バサバスターミナルのさらに10km北側のスマトラ縦貫道沿いにあります。飛行場には高級ホテルから迎えのバスが出ていて無料で送迎してくれます。

 市内には無線タクシーがたくさん走っていますし、飛行場やタンジュンカラン駅や大きなホテルには必ずタクシーがスタンバイしています。レストランなどからタクシーを呼ぶことも可能です。
 タクシーメーターは付いていますが、近距離の運賃はメーターどおりではなくネゴになります。ご注意を。

【ここからは乗用車で行くときのヒント】


 ジャカルタのクボンジェルク(Kebon Jeruk)から少し行くとリッポカラワチ(Lippo Karawaci)である。ここのリッポビルはいつ見てもウルトラマンに見える。
 約20分メラク方面に進むとチクパ(Cikupa)の料金所である。ジャカルタのタクシーはここまでしか行かない。この先20分にはチウジュン(Ciujung)の休憩所がある。コーヒーなどの軽食がとれるとともにトイレもある。

 クボンジェルクから約一時間でメラク町である。街道を進むと大型バスやトラックが道端に停車しているのがみえるだろう。フェリーターミナルまではもうすぐだ。
 ターミナルに入り、案内板に従ってすぐに右手方向に進むとフェリーの料金所がある。ここでフェリー代を払う。料金はしょっちゅう変わるが日本円で1500円程度だ。運転手の運賃はフェリー代に含まれているが、乗客は乗船料を払う。三等の切符を買っておいて、必要に応じて船内で料金を払っ て上のクラスにいける。
 構内には係員がいて、乗船するフェリーの桟橋を指示してくれるからそれに従えばよい。桟橋は1から4まである。フェリーの種類が色々あるので、先にメラクを出たフェリーが先にバカウニに着くとは限らない。
 小型のフェリーだと大型車と混載になるが大型フェリーでは小型車はアッパーデッキ搭載となるので、乗り込み口が別々になる。フェリーによっては乗り込む時に段差があるものがあるので、乗り込む直前に乗客を降ろして車高を上げておいた方が底をこすらなくてよい。フェリーによっては、大型車の搭載場所を通ってアッパーデッキに上るものがある。船内は油でぬるぬるしていて滑るし、スロープの踏み板がすり減っているので、坊主タイヤでは横滑りして危険だ。

 バカウニのターミナルを出ると、すぐに直線コースの急な上り坂だ。勾配が急なのと大型車がゆっくり走っているし、道路には時折大穴があいているので、夜間や雨天の際には十分に注意すること。この坂を登りきったところからランプンの広大な平地が見え、スマトラに来たなあと毎回感激するのである。

 バカウニのターミナルから20分先の左側にKrakatauというレストランがある。ここはパダン料理が主でそれほどおいしくはないがきれいだから日本人向き。その5分先にはSiang Malamというドライブインがある。ここは長距離バスが休憩所に使っているため、いつでも混んでいる。この先にもTiga Saudaraというドライブインがある。ガソリンスタンドは約20分おきにあるからどこでも給油できる。

 バンダルランプンとのちょうどまんなかあたりにカリ・アンダ(Kali Anda)という町があり、その入り口には陸軍の駐屯地がある。左側にはコニーデ型のラジャバサ山がみえるだろう。その西側は海で海中温泉がある。温泉の周りは整備されていてきれいな海浜公園になっているから、一休みするには最適だ。

 その先30分ほどでタラハン峠(Puncak Tarahan)に着く。バカウニ側はそれほどの急勾配ではないが、バンダルランプン側は急勾配の曲線コースになっている。交通事故が非常に多い危険な地域だ。道路舗装がめちゃくちゃに悪い時があるからスピードを出してトラックを追い抜かないこと。
 この峠を下ってしばらく行くと左側に観光地であるパシール・プティ(Pasir Putih=白砂)海岸がある。きれいな海岸であるから毎日曜日はとても混む。
 え、「混むのは海水浴シーズンの夏だけでしょ」って? そうです。夏だけです。ただしインドネシアは一年中夏です。

 パシールプティの先には右側に新しい火力発電所がみえる。ここまで来たらパンジャンまではあと一息である。ここからは連続している集落の中を道路が走っているので交通量が増え、運転には注意が必要だ。
 新しい火力発電所と既設のタラハン火力の間の右側にブガダン(Begadang=昼も夜もの意味)というパダン料理のドライブインがあるから、空腹時にはここで腹ごしらえも可能だ。

 そこからほどなくパンジャン町への分岐点がある。

 トルクブトンにいくなら混雑するパンジャンの町を迂回するために、この分岐点のもう一つ先の大きな三差路を左折して海岸沿いの大きな街道に出るとよい。この道路は六車線ありいつもすいていて走りやすい。

【観光地案内】

 町から日帰りできるランプンの観光地といえば、町から90km北にあるウエイカンバス(Way Kambas)の象の学校が有名である。またこんなひなびた土地には釣り合わないプグンラハルジョ(Pungung Raharjo)の遺跡公園がある。市内のトルクブトンの警察本部の前の公園にはクラカタウ火山噴火記念公園がある。町の西100km先には日本のODAで建設されたバトゥティギ(Batu Tegi)ダムがある。筆者がこのあたりに詳しいのはこのダム工事に従事していたからなのだ。

 バンダルランプン市内には海鮮料理店が多く、新鮮な魚介類が楽しめる。ワタリガニが安いのでお試しを。といっても店によっては2000円くらいぼったくられるところもある。

 日本人好みのお土産は「ない」。トルクブトンのJl. Kupangにはンペンペを売っている店が多いから、帰路車内で食べられるようにつくりたてを買って帰るのもよいだろう。
 閑話休題

 2001-6-10にメラクからジャカルタまで一般大衆の使うバスで行きました。
 インドネシアでは、バスでも車内販売があるんです。それだけじゃなくって、楽団が入ってきたりマスジドの寄付が来たりいろいろとあります。
まずは、車内販売・寄付の種類からはじめましょう。

  1. ミネラル水、コーラ、ファンタ、テ・ボトルは、商品の全種類と栓抜きをもって、「ミヌマン・ミヌマン(飲み物)」といって混雑したバスのなかをひょいひょいと移動していきます。
  2. スナックには、ピーナツの揚げたもの、油揚げと厚揚げのちょうど中間くらいのもの、マンゴの切り落とし、エビセンににたウンピン、その他の得体の知れないインドネシアのお菓子です。
  3. 日用雑貨としては、ねじ回し売りがきました。小型の精密ねじ回しをセットで約200円。これは力をいれるとすぐに壊れる。
  4. 英語の辞書。こいつの口上がおもしろかった。「グローバル化が進んでいるこのご時世、国際語として使われている英語を勉強する必要がある。この辞書は小型で持ち運びべんり」というものです。値段は約五十円。一般大衆が使うこんなバスの中でグローバル化もへったくれもあるものか、とおもわずニヤッとしちゃいました。
  5. 寄付。寄付にはマスジドの建設資金と貧困家庭の子女救済のための資金拠出がありましたが、どちらもほとんどその目的には使われていません。ただの物乞いです。だからやったことありません。

 さてこれから本題の楽団です。
 「みなさま、ご旅行中のひとつの慰みとして我々の歌を聞いていただきたくおもいます」という口上から始まって、インドネシアのポップスを数曲歌い上げます。終わると「良いご旅行をお祈り申し上げます」です。
 彼らの使っている楽器に興味をひかれました。ギターが一台か二台と、パーカッションはミネラルウォーターの20リットルのプラスチックボトルの底を器用に叩くと、ドラムセットに似た音がでるんです。バスドラは軽く握ったこぶしで底を叩いてそのまま止めておくと「どっ、どす、ど」という、縁を叩くとタムタムのような乾いた小型のドラムの音がします。それに、マラカスは、ヤクルトのプラスチック容器に米をそこ三ミリくらい入れて、ふたをして輪ゴムで二つをつないであるものです。こいつをうまく振るとマラカスのように聞こえます。

 シンバルは、ファンタのガラスビンを白銅のコインでちんちんと叩きます。五人そろうとこれだけでもけっこうなバンドになっちゃいますよ。ためしにやってみてください。町内会のかくし芸大会にも出せそうです。

 乗客とこのバンドマンたちが話しているのを横で聞いていると、バンドマンは、かわいい女の子にも会えるし、小銭も稼げるし、バスにもただで乗れるからストレス解消にやっているのだ、なんていっていました。「負け惜しみ」ですな。

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2007-10-07 作成
2009-10-19 追加
2010-10-22 追加
2015-03-17 修正
 

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