嗚呼、インドネシア
37話 ニャイ・ロロ・キドゥル (Nyai Roro Kidul)
研究論文
ラトゥ・キドゥル
南海の女王

ジャワイスラムの視点からのKANJENG RATU KIDUL
MUHAMMAD SHOLIKHIN著
序文
第一章 霊界に関するジャワ人の神秘主義の熟考
第一節 南海の女王陛下の存在に関する信仰
第二節 ジャワイスラムにおける供物寄進という祭事の裏側にある象徴
第三節 供物:永遠の命に至る象徴と神へ近づくこと
第四節 寄進としての厄払い、海祭り、祝宴の文化
第五節 寄進の概念と前後関係についての預言者ムハンマドの教え
第六節 ジャワ人ムスリム環境下での祭事と海神祭り
第七節 南海の女王陛下研究へのアプローチ
第二章 ジャワイスラム神秘主義を考える上での南海の女王陛下の神話
第一節 ジャワ人ムスリムの神秘主義の象徴としての霊界への観点と南海の女王陛下の立ち位置
第二節 幽界内における南海の女王陛下
第三節 南海の女王陛下:人類かあるいは幽体か
第四節 Wahyu keprabon(神の啓示)と南海の女王陛下との関係
第五節 南海の女王陛下と王の超能力
第六節 なぜ南海の女王陛下でなければならないのか
第三章 ジャワ社会における南海の女王陛下、南海冥府の姫、北海の女王
第一節 南海の女王陛下とは誰か
第二節 第一話 Dewi Srengengeの南海の女王陛下
第三節 第二話 南海の女王陛下
Jaka SuruhとRatna Suwidaの恋愛物語
第四節 第三話 PajajaranのRatrna Suwida姫
第五節 第四話 Biding Lautと南海の女王陛下
バタック人の子孫
第六節 第五話 ジョクジャカルタ王宮のAbdi Dalemによる南海の女王陛下
第七節 解釈その一 南海冥府の姫あるいはNyai BlorongはDewi Nawangwulanであった
第八節 解釈その二 南海冥府の姫あるいはNyai Blorongは南海の女王陛下の姫であった
第九節 南海の女王陛下の百の名前
第十節 南海の女王陛下と北海の女王の邂逅
第十一節 南海の女王陛下とSuroの月の関係
第四章 各種のジャワイスラム古典における南海の女王陛下
第一節 ジャワ文学における南海の女王陛下
第二節 南海の女王陛下とPanembahan Senopati
第三節 南海の女王陛下とPanembahan Senopatiの物語の意味
第四節 ジャワの本での南海の女王陛下: 予言と神秘の歴史
第五節 ディポネゴロ時代における南海の女王陛下とディポネゴロ
第五章 南海のSegara Sewu王国(西暦851年から2008年までの神秘的・歴史的概要とその政府組織)
第一節 神秘的体験がSegarasewu宮廷にはいり込んだ
第二節 南海の霊界王国への侵入
第三節 西暦851年から2008年までの南海霊界王国の歴史
第六章 南海の女王陛下に関連するいくつかの参詣地
第一節 南海の女王陛下の聖地
第二節 プラブハンラトゥーのサムドゥラビーチホテルの308号室の神秘と魔力
第三節 南海の女王陛下はAl-Qadrの章にあるアッラーの使徒か
第四節 スカルノは南海の女王陛下の夫であったのか
第五節 Dalepihの天国洞窟とLangse洞窟の神秘
第六節 Langseの洞窟は南海の女王陛下の休憩所
第七節 NusakambanganのMasigit Sela洞窟の神秘
第八節 KebumenのKutowinangunのBulupitu遺跡のPatih Lebetの伝説
第九節 Panembahan Senpatiの愛したParangkusumo海岸、南海の女王陛下と南海の王宮への入り口
第十節 Parangkusumoの土の山は東南アジア唯一
第十一節 Parangkusumoにおけるほかの支配者はいるのか
第七章 南海の女王陛下の存在に関連する各種の伝統と慣習
第一節 ジャワイスラム社会における南海の女王陛下への儀式
第二節 Suro月一日、ジャワ歴元旦の厄払いと記念日
第三節 南海の女王陛下のための神秘的な祭事の意味
第四節 ジョグジャカルタの王宮のNdalemにおけるSemangの女性奉納舞踊
第五節 Lambang Sariの女性奉納舞踊
第六節 Suro月1日の晩の山への奉納と登山祭り
第七節 ParangkusumoにおけるKliwon火曜日とKliwon金曜日の晩の祭事
第八節 南海の女王陛下と結びつく断食と苦行
第九節 Suroの祝宴と厄払い
第十節 十日間の苦行
第十一節 Jamas Pusakaの儀式
第十二節 メラピ山の火山泥流祭りと雨ごいの儀式
第十三節 Suroの月における冥府の女王の婿取りに関する神秘と付随する儀式
第十四節 純粋なジャワイスラムの厄除けの祈祷
第八章 南海の女王陛下とジョグジャカルタの王宮との関係とジャワイスラム神秘的方法
第一節 ジョクジャカルタ宮廷の神秘的位置
第二節 ジョクジャカルタ王宮の図像学と建築における象徴主義の意味
第三節 1890年におけるジョクジャカルタ王宮の入口の門
第四節 1935年におけるジョクジャカルタ王宮の南広場北に位置するSiti Hinggilの位置
第五節 1989年のMalioboro
第六節 ジャワイスラム哲学における南海の女王陛下の神秘的図像学の位置
第九章 おわりに: 南海の女王陛下の存在に対する信仰とジャワ人の生活へのその影響
 添付 Babad Tanah Jawi (ジャワ年代記) 参考文献・編集後記など

序文
<3>この物議を醸しだす性質を持った記事を確実に含むこの本を社会に提供できたことを神に感謝するものである。
Kanjeng Ratu Kidul(南海の女王陛下)の存在に関するジャワ社会の大部分の信仰は常にKejawen (クジャウェン=ジャワの風習)との関連で議論を巻き起こし、ジャワのムスリム社会、さらにはイスラムの「六信」の解説とも結びつけられている。
上記の議論は「南海の女王陛下」が実在であったのかあるいは神話上の存在であるのか、人間であったのか、霊体であったのか、その始まりはどうであったのか、それはどこで起きたのか、女王は広い南海のどこにいるのかなどから始まる。この議論は、この信仰がジャワ人たちの生活に障害になっているかどうか、この信仰が現在でも適切なのであろうか、この件に関するイスラムの視点は実際にはどうなのであろうか、さらには精神主義と神秘主義(スゥーフィズム)との関係はどうなのであろうかということにも関係してくる。 <4>この本の中で著者は上記の問題に関して系統的に解説を与えようとする。この本の出版によって、意味を持たなかったものが互いに関連付けられることも著者は感じているとはいえ。事実、この議論への情熱がますます高くなることを期待している。しかし、「意見の相違は人にとってのお恵み」という哲学を踏まえて、十分に繊細な噂に関連したいくつかの調査の記録を含むこの本をあえて上梓するものである。それゆえ、著者はクジャウェンの関係からのみならず、イスラム神秘主義、さらにはジャワ文化の研究者、継承者たちの研究結果からも引用する。それゆえ、著者がこの本で発見した一部の事実である各種の事項と読者は比較することができるのである。
南海の女王陛下の存在についての信仰は実際には、ジョグジャのカスルタナンとソロのカスナナンを含むマタラム王国の存在、古マタラムやクディリ時代以来の「ジャワ教」の遺産から受けている信仰、ジャワをはじめ大洋に囲まれているというインドネシアの地理的条件、当初から17世紀まで、ジャワ人はイスラム神秘学の教えを携えた船乗りとして有名であったということに関連している。これらすべては、南海の女王陛下の存在についての信仰の発展をともに促進するものであった。
南海の女王陛下は、神がal-mala-ikah al-hafadzah、霊界で守護神として分類した霊体でも幽体でもなく聖なる存在の一部として信じられている。ジャワ人は南海の女王陛下の活動地域はインドネシアの南部 であると信じている。
一方、ジョグジャカルタの王宮によると、南海の女王陛下はジョグジャカルタの王宮の存立とともにその役割を担っている幽体の象徴となっている。この件は、ジョグジャカルタの王宮が確かにジャワ神秘主義の教えとイスラム神秘主義の融合という考え方にその基礎をおいているからである。南海の女王陛下はジャワイスラムの精神主義における哲学の位置にまで達した象徴とその代表なのである。<5>
この本の中で、著者は南海の女王陛下の存在についての各種の見解を解剖している。南海の女王陛下の系譜に関して、南海の女王陛下とNyai Rara Kidul(南海冥府の姫)の相違、特に南海の女王陛下とジョグジャとスラカルタの諸王、南海にあるSegarasewu(南海の女王陛下の王宮)の歴史、神話の秘密と南海の女王陛下の存在に関係して大衆が行っている各種の慣習的行為から精神的な意味、神秘的な教えと哲学に関連する南海の王宮から霊感を与えられたジョグジャの王宮の建築様式、南海の女王陛下に対する信仰と宗教上の規律と方法、哲学と心理の骨組みとの関係である。
このように、聖像学と精神的な象徴主義において南海の女王陛下はジャワのムスリムの思考の土台から「私に染み付いた」哲学の教えは切り離せないものなのである。この本がすべての読者に利益をもたらすことを著者は希望するのみである。
メラピ山麓にて2009年2月25日
K.H. Muhammad Sholikhin

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2017-08-02 作成
2019/6/24追加
2019/12/18 追加
2020/04/10 追加
2020/0/14 追加

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