インドネシア不思議発見
41話 「生き残り」のために

  最近(1997と98年)のインドネシアは昏迷状態である。非常時の避難用にシンガポールまでのオープンチケットを配った会社が多いと聞く。このチケットは実際にはほとんど役に立たないことを忘れてはならない。ただ、アタマでっかち人間(アタマ人間)たちを安心させるためだけの方便なのだ。騙されてはならない。筆者の大嫌いな「客観的」判断では、このチケットが役に立つには次の条件がすべて満足されていなければならないことになる。

1. 飛行機が安全に飛んでくる状態が確保されていること
2. 空港が運営されていること
3. 空港でチケットを持っている人だけが優先搭乗できること
4. 空港までの交通が確保されていること
5. 空港の建物が安全であること
 これらの全ての条件が満足されるような社会的混乱が少ない状態であれば国外に避難する必要はないし、大混乱になったらこれらの条件のほとんどが満たされない状態になるだろう。

 そうなったら日本人はどこに逃げるか。大使館か?大使館には二万人もの人を収容できるスペースはない。一時間でトイレは詰まるし、数時間後には食物の奪い合いになることは目にみえている。特にアタマ人間はパニックに陥ると餓鬼状態になるからだ。
 さらに軍事的にみれば、こんなに多数の日本人が一個所に集まっているのだから、人質にするのはいとも簡単である。日本政府を困らせるのは簡単だ。避難民達に水と食料を与えなければよいだけだからだ。相手を喜ばせるようなこんなカモネギは絶対にやってはならない。

 そうなったらどうするか。インドネシアから逃げることのできないインドネシア人たちは、安全な地方の親戚知人を頼って逃避行するだろう。それについてゆくしかない。
 この際にはいつもインドネシア人に意地悪をしている日本人はおいてきぼりになる。特にアタマ人間は外界の状態を見ないし、また見ようとしないから混乱に巻き込まれて死傷する可能性が高い。インドネシア人たちはそれを見てウサを晴らすように口では「Kasihan」と言うだろうが心の中では「Rasain loh!(ざまー見ろ)」というだろう。

 第40話を格言で始めたから、第41話は格言でしめよう。それは「自業自得」である。ダーウィン風に言えば「適者生存」の原則が、アタマ人間たちが信奉している「客観的」という言葉の通りに、適用されるのである。 

 既にシナリオは書かれた。後はそれが上演されないことを祈るのみである。

【追記】
 この文をアップロードしてから2ヶ月3週間後の5月14日の午後にジャカルタ暴動が始まった。筆者も避難民の一人として5月18日の夜、ジャカルタ空港を後にしたのだった。その時の記録が別ページにあります。

【参考文献】
「よろずインドネシア」の「掲示板」書き込み

目次に戻る 不思議発見の目次に戻る

1998-02-22 作成 ジャカルタにて
2002-07-30 更新 読みやすく改訂
2002-07-30 【追記】を追加
2015-03-05 修正
 

inserted by FC2 system