インドネシア不思議発見
37話 インドネシア人の顔と肌

 「破顔一笑」「明眸皓歯」とはインドネシア人のためにあるのではないかと思われるような言葉です。微笑みとともに日に焼けた小麦色の顔に健康的な白い歯が目立つとともに、日本人の中ではもう失われてしまったような反射率の高いキラキラと輝く大きな丸い目が優しく見えます。

 ジャカルタで普通見かける人たちには、中・東部ジャワ州出身のジャワ人、西ジャワ州出身のスンダ人が多く、北スマトラ州出身のバタック人や西スマトラ州のミナン人などが続きます。インドネシアの部族の中では同一人種の中での個体差の方が、人種間の相違よりも大きいのですが、一概に言って、ジャワ人には丸顔で色の黒い人が目立ち、スンダ人にはあごがしゃくれていて肌の色の薄い人が目立ちます。バタック人には日本人のように頬骨の高い人が多く、いかつい感じを受けます。ミナン人は少しアラブの血が混じっているように見えます。彼らの中でももっとも頻繁に見かけるジャワ人についてお話しましょう。
  また、女房連れで歩いている時に他のカップルにであうと、筆者も女房も必ず相手カップルの女性側をまず鋭く観察します。聞くところによると他の夫婦でもそうですから、これは世界的な常識であると判断して、男性にも女性にも興味あるジャワ人の女性に絞って話を進めることにします。

 「インドネシア人は色が黒い」と言われていますが、これは一般論であり、日本人である筆者よりも色白の人たちがたくさんいます。色白の人たちはお金持ちの階層に多く、色黒の人は貧乏人に多いようです。しかし、ここでも例外が多いので、肌の色で彼らの属する階級を決めるわけにはいきません。同じ両親でも、色の白い子と黒い子が兄弟姉妹になっていますからますます訳が分からなくなるのです。良く観察して見ると日本人の中でも、奇数番目の兄弟は色白だが偶数番目はそれほどでもないと言う事が分かりますから、色の差がはっきりと目立つインドネシア人ではさもありなんということになります。真夏に日本に戻ると、日焼けした若い女性がジャワ人に見えてしまうこともあるほど、ジャワ人は「色黒」ではないのです。日本人だって二十数年間も日に焼けばジャワ人と同じような色になるでしょう。たまたま日本の場合は秋・冬・春と肌が太陽にあたらない時期が永いので、夏の間にせっかく貯えた色素がその間に消えてしまうのでしょう。
 よく見かけるジャワ人の赤ちゃんに限ると、赤ちゃんの時の肌の色はそれほど日本人とは変わりません。しかし、陰嚢の色が日本人に比べて濃いことが、かれらの肌の色の将来を語っているようです。男の子は外で遊びますから、ほとんどの男の子の場合には年を取るにつれてどんどん日に焼けて黒くなります。
 この写真はごくごく普通のジャワ人の子供達です。
 上流家庭出身の友人の一人の色白の娘さん(ジャワ人とスンダ人の混血)を小さい時から観察した結果、年とともに肌の色が変化してくことに気がつきました。小学校高学年までは、生まれた時の肌の白さなのですが、思春期にかかると日焼けのためか、肌の色が濃くなるとともににきびも花盛りになります。高校二年生くらいからはにきびもおさまりはじめ、肌の色が徐々に大人の女性らしくしっかりと白くなっていきます。結婚して妊娠するとその時だけは肌の色が黒くなるのです。産後の肥立ちが良いとまた元どおりの色になります。この娘さんがジャワ人と結婚したら左の写真にある息子が生まれてきました。こんなに色白のインドネシア人もいるんですよ。
  一方、田舎の娘さんたちは小さい頃から田んぼで親の手伝いをしていますし、水浴びも川ですることが多いので、顔だけではなく手足まで小麦色のまま大人になる人が多いようです。田舎の娘さんがそのまま年を取ると、あたりまえですが、おばさんになります。田舎の用水路で水浴びしているこれらのおばさんたちを見ると、背中にくっきりとブラジャーの跡が残っています。この跡は、肌の色には明らかに日焼けによる影響があるという証拠になります。

 水浴に使う水の質が肌の色に微妙に影響を及ぼしているということを聞いたことがあります。引っ越した先の水を使っている間は肌の色が濃くなったが、元住んでいた街に戻ると肌の色が元に戻るのだそうです。こういうことが何回もあったのだそうです。両方の町でも生活の仕方がそう違わないのに肌の色が変わるのは不思議なものです。
 日本人でも、日に焼けると赤くなるだけで日焼けが定着しない人たちがいます。わずかですが、ジャワ人の中にこういうタイプがいます。

 それほど色黒でない肌の持ち主のファウンデーションは日本でいう「タン」色が合うようです。外にあまり出かけない中流家庭の主婦などは、普通はファウンデーションの代わりにベビーパウダーで間に合わせていることが多いようです。
 口紅も肌の色に合わせて、かなりきつい色彩の物が好まれるようです。日本人に比べて口が大きい上に唇の厚い人が多いので、日本人より口紅の消費量が多いのではないかと思わず邪推してしまいたくなります。

 スハルト元大統領の亡くなったティン夫人に代表されるように、ジャワ人の女性には、眉墨でまあるく眉毛を書いている人が結構多いように見受けられます。眉毛をほとんど抜いてしまったのか、もともと眉毛が薄かったのかは知りませんが、スッピンで会うと眉毛がないのでまるでオバケです。

 日本の若い女性は髪を染めている人が多いのですが、ジャワ人の女性には染めている人は見掛けられず長髪の「みどりの黒髪」の人がほとんどです。「髪は女性の象徴」と言えるでしょう。が、実は背景を黒くして肌の色を少しでも薄く見せようとしているのです。肌が白いと目鼻立ちがはっきりしますから、それだけでもきれいにみえるのです。ですから、男女を問わず肌の色の白い人が美人だハンサムだといわれています。顔の造作はその次の問題のようです。
 しかしながら、21世紀に入ると一般的に若い人たちが色白になったことと共に鼻が高くなったように思えます。これは筆者の邪推ではなく、インドネシア人たちが口をそろえて言っていることですから正しいはずです。

 肌の色と服装の色、それにその背景になる場所の色彩と光線の強さが服装の色を決める大きなファクターになっているようです。
 赤道に近いインドネシアでは日本に比べて太陽光線が強いので、すべてのものの輪郭がはっきり見えます。雨が多いために空中の埃が掃除されることが多いせいか、日本の台風一過の朝のように、雲の形もはっきり見えます。咲き乱れている花の色も日本のものよりビビッドで大ぶりなものが多いように思えるのは太陽光線の強さの違いだけでしょうか。
 ジャワ人は西アフリカの人ほど黒くはありませんし、日本人ほど白くもありません。そこで、洋服を選ぶ際には肌の色と合うものを探さなければなりません。「色の白いは七難隠す」と言われていますように、肌の色が濃くなると合う色の洋服がなかなか見つからなくなります。西アフリカの人たちのように真っ黒だと、かえってどんな色でも似合うようになるのですが、インドネシアでは難しいところです。日本女性よりもビビッドな色の服を着て町を闊歩していますが、それほど違和感はありません。インドネシアに来ている日本人の奥さん達の方が、インドネシア人の奥さんよりも地味な色合いの服を着ているのは、日本で培われた色彩感覚によるものなのでしょうか。

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2001-11-18 修正 スンガイダレーにて 坊やの写真と説明を追加。
2002-07-25 修正 バトゥティギにて 文章のアップデート
2002-07-25 修正 バトゥティギにて 二人の子供の写真を追加
2015-03-04 修正
 

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