インドネシア不思議発見
17話 生活の中のイスらム-(5)

(ムスりムの条件と義務)
 まさか、と思われるでしょうが、ムスりムになるためには資格基準がありこれに該当しない人たちは振り落とされます。資格基準そのものが面白いのでご紹介しましょう。

 資格基準はこれらの条件だけです。
(1) 健全な理性を持った人間であること。(テンカンを除く精神病でないこと)
(2) 青年に達していること、すなわち
(2a) 男子の場合は十五才以上であるか、あるいは夢精のあったこと。
(2b1) 女子の場合は十五才以上であるか、あるいは初潮があったこと。
(2b2) また女子の場合は睡眠中の夢であっても、実際の夫婦の交わりでも体内で射精させたことがあること。
 当たり前と言えばそれまでですが、あまりにもドギツイく感じられませんか?漠然とした条件だけで納得する日本人と違い、あくまでも具体的で直接的なのがアラブ風な特徴です。ここが日本にイスらムが入りにくい理由の一つとなりましょう。

 寄付を沢山しなければならないとか、選挙応援をしたり、毒ガスをつくらなければならない体力が必要だとか、上司や組織の大量殺人の命令には絶対服従せよとかはこの条件に入っていません。人種も肉体的条件もないのです。またオカマでもいいのです。

 また、キリスト教と同じように、イスらムでは信仰の種類を決めてあります。

 これには(1)アッら−への信仰、(2)天使への信仰(3)クルアンなどの聖書への信仰、(4)預言者達への信仰、(5)世界最後の日(Kiyamat)への信仰、(6)天命への信仰です。これを信じないことにはムスりムにはなりえないのです。というのは、当たり前の話ですがイスらムがこれらの信仰を元に成り立っているからです。浅学非才の筆者はこれらを詳しく説明できませんから、興味のある方は「その筋の本」を読んでください。

 また、ムスりムの義務として五つの行為があります。これらは個人的な義務で他人に任せられないものです。これには(1)信仰告白(syahadat)、(2)礼拝(shalat)、(3)断食(Ramadhan月のpuasa)、(4)喜捨(zakat)、(5)メッカ巡礼(haji)があります。かなりきつい義務ですが、「オウムで出家」することを考えたら、大したことではありません。これらは社会・集団の中で「皆と一緒に」しなくてはならないことですから、気張ったりせず淡々とムスりム達はやっています。

 中東の宗教らしいのは信仰告白を最初の一回ではなくわざわざ毎回の礼拝の都度させることです。ここでも中東のしつこさがでてきています。また断食は第十三話に書きました。「喜捨」はザカ−トという義務(wajib)と任意のサダカがあります。ザカ−トには二種類あってFitraの一人一年白米3リットルというのと、財産の2.5%を供出するAmalがあります。Amalは金90グラム以上の余剰財産を持っている人が払う義務があります。羊や山羊の場合には0.9頭という訳にはいきませんから、これには40頭以上持っている人が該当し、支払は成獣の牡山羊と決まっているそうです。

 あなたが日常困っているその他の任意の寄付については別な話として取り上げようと思っています。

 ここでは義務の題目だけあげておくことにして、みなさんが見かけるムスりム達がやっている義務についての詳しい話は「不思議発見」の続きに記します。

[参考文献]
Pedoman & Tuntunan Shalat Lengkap (礼拝完全手引き書) Abu Masyhad著 PT.MG.Semarang刊
Tuntunan Shalat Lengkap & Wiridan dan Shalat-shalat Sunat (義務礼拝、クルアン 抜粋付きと任意の礼拝手引き書)

 [おまけ]
 どうしてインドネシア人達はLengkap(完全)という単語を本の題名に付けるのがこう好きなんだろう。こう題された辞書にはほかの辞書に比べて間違いが断然多いのだ。自分達で「人間のすることには『完全』はない」とかいいながら、日本人には完全を要求してくる。勝手である!<<思わずチビまる子のナレ−ション風になってしまった。ハッハッハ (続く)
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2015-03-03 修正
 

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