インドネシア不思議発見
12話 おんなやもめ
 「男やもめにウジがわき、女やもめに花が咲く」と日本では呼ばれています。この国ではそれほどでもありませんが、少しは「女やもめに花が咲く」ところがあるようです。 男やもめのDudaに対して女やもめはJandaとよばれています。特に、結婚直後に離婚してまだ処女のやもめにはJanda Kembang(花咲きやもめ)という名が与えられていて、世の中のプレイボ-イたちに珍重されています。日本人男性とは違い、インドネシアの男性の大部分は職場での話題もアケスケに「セックスとオンナ」ですから、知り合いの美形の奥さんが離婚するのを待っている人も多いようです。
 男やもめは、好きなタイプのオンナをまた探して同棲するか結婚するかして生活しています。男の方は職業があったり日銭が入る仕事でどうやら食うだけはできるのですが、女の方は大変です。離婚後、彼女達はいろいろな方法で生計を立てています。生計の立て方にも色々なパタ−ンがあります。

 これらのパタ−ンを彼女達の「学歴・職業的能力」、「親の貧富」、「勤勉さ」の3次元で分析し生計の立て方を割り出した結果は次の表のようになりました。
学歴・能力 高い 低い
親の貧富 金持ち 貧乏 金持ち 貧乏
勤勉さ 勤勉 怠け者 勤勉 怠け者 勤勉 怠け者 勤勉 怠け者
職 業 会社員 小姑 会社員 接客業 いない 小姑 女中 夜の蝶
パターン (a) (b) (c) (d) (e) (f) (g) (h)
 パタ−ン別に説明するとこうなります。

(a) なんだか理由は分かりませんが、不幸にして離婚に至ったわけですから、親は「バツイチ娘」の心を思いやり、自分の知り合いの会社などに就職斡旋して、傷の癒えるのを助けようとします。子供達のことを考えて、このJandaさんも一生懸命働きます。さらに、この人たちは能力が高い上、勤勉ですから会社の方もなにかと重宝して良い待遇をしてくれます。こうなると「花が咲く」という可能性も十分高くなります。このパタ-ンにはインドネシアの金持ちと離婚した日本人女性も含まれることがあります。
(b) 自分本意の性格で「たち」が悪く、両親の反対を押し切って勝手に結婚しておいて、すぐさま離婚などというプロセスを踏みます。生来の怠け癖から、実家に帰ってもごろごろして口うるさいだけで何の役にもたたず、かえって兄弟の嫁さんから憎まれたりして、家庭破壊の元になります。テレビドラマによく出てくる憎まれ役のタイプです。
(c) 貧乏な中から努力して学校を出た勤勉な人ですから、親からの金銭的援助は受けられないとしても「女の細腕で子供を育てるのは大変だねぇ」とたくさんの人たちが陰にひなたに援助してくれます。まじめな勤務態度で、(a)さんと同じように会社からも隣近所からも高く評価されています。
(d) 貧乏な中から幸いにも学校を出られたのですが、生来の怠け者ですから努力をしないで金を稼ごうとする傾向にあります。日本人向けのカラオケバ−には本当の独身女性に混じってこの手がかなりいます。ですから、カラオケバ−で嫁さんを見つけようとするのはかなり大きな危険が伴う賭けになります。ご注意下さい。
(e) 親が金持ちで本人が勤勉なのに学校を出ていないという例はありませんから、説明を省略します。
(f) 親が金持ちなのに学校も出ていないというのは完全な怠け者で反抗的な性格です。従って(b)さんよりもたちの悪い「最低の小姑」になるタイプです。
(g) これがお宅で働いているコックさんや女中さんの典型的なパタ-ンです。学校を出ていないので一般の会社に勤めることもできず、働き口といっては女中さんなどの家庭内労働者になるしかありません。何年か働いて小金が溜まったところで美容院を開いたり洋服の縫製などをして細々と町で生きて行くか、田舎に戻ってワロンを開いて生計を立てたり、気に入った勤め口で何十年も女中さんとして働いたりしています。
(h) これがホテルのロビ−やバ−にたむろしている「オンナ」たちです。彼女たちは生計の立てようがなく、この職業を選ばざるをえなくなってしまったのです。もちろん将来のことなどは考えず刹那的に生きています。「わたしらに明日はない」といったところでしょうか。この人たちの離婚の原因は自分自身にあるのですが、自分本意の彼女たちはそんなことなどおかまいなしに男を悪者にしてのうのうと生きています。彼女たちをインドネシア語でKupukupu Malam=夜の蝶と言います。日本語と同じです。

 この他にも考えられるパタ−ンは幾つもあるのですが、あまり複雑にするとかえって分かりにくくなるのでこの程度に抑えました。読者の方々で興味がおありの方は、ご自分で色々とパタ-ン分析をしてみるのもおもしろいかも知れません。

 少し古いのですが1988年の西ジャワ州の統計資料によると、15歳でオンナやもめというのもありました。これは第十一話の「結婚と離婚」に書いた「口減らし」という経済的理由から発生してきた悲しい現実です。最近でも年若いJandaがいるようですが、最近の統計資料には掲載されていません。これは政府としても実態を公表するのは恥ずかしいからなのではないのでしょうか。
 先日、一緒に働いていた独身の女性インシニョ-ルに出身を尋ねると、父親がジャワ人で母親がスンダ人でした。誰かが「それじゃあ、Jawa-Sundaを省略してjandaかぁ」と一言。事務所中が爆笑の渦に巻き込まれました。未婚なのに「バツイチ」とはかわいそう。

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2015-03-02 修正
 

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