インドネシア不思議発見
1話 まずびっくり
   インドネシアでは、未明に「アラ−フ、アクバル」のアザ−ンの声がモスクのスピ−カ−から流れ出します。

 日本から初めて着いた翌朝は「爆発事故でも起こったのか!?!?」とベッドから飛び起きて窓から外を見るでしょうが、まだ薄暗く人通りもない道には何の変化も見られません。「な−んだ、いったいどうしたんだろう」とベッドに戻って時計を見るとまだ五時前です。前日までの歓送迎会の二日酔いと転勤準備のための疲れもあり「チクショウ」とかつぶやいてまたベッドに戻ったことでしょう。

  これは回教(この文章では「イスラム」と呼ぶことにします)の一日五回のお祈りの最初のもので、スブ−と呼ばれる日の出前のお祈りです。

 この一日五回のお祈りにはそれぞれ「スブ−(Subuh)」「ズフ−ル(Dzuhur)」「アシャ−ル(Ashar)」「マグリブ(Magrib)」「イシャ−(Isya)」と名付けられており、それぞれ大体4:30, 12:00, 15:00, 18:00, 19:00がその時刻にあたります。お祈りの時刻は日の出と日没の時刻により決まりますので、地域と季節によって異なります。インドネシアに慣れてくるにつれ、モスクからのお祈り(Salat)の声で大体の時間がわかります。「何時頃?」ときかれて、あなたがこのSalatの名前を頻繁に使うようになったら、あなたはもう完全にインドネシア人です。

   アザ−ンの「アッラ−フ、アクバル。……」はこんなことを言っているのです。(筆者拙訳)

 「アッラ−はとてつもなく偉大である、アッラ−はとてつもなく偉大である」
 「我はアッラ−しか神はいないことを心底から宣誓する」
 「預言者ムハンマドをアッラ−の遣わしたものと心底から宣誓する」
 「お祈りをしよう、お祈りをしよう」
 「幸福をさがそう、幸福をさがそう」★
 「アッラ−はとてつもなく偉大である、アッラ−はとてつもなく偉大である」
 「アッラ−しか神はいない」
  スブ−の時には★に「寝ているよりもお祈りをした方がいいよ」と追加されます。日本人にとってこの文句は妙に具体的でおかしいですね。

   何て聞こえるかというと、

 「アッラ〜フ、アクバル。アッラ〜フ、アクバル」x2
 「アシュハドゥアッラ〜〜、イラ〜ハ、イッラッラ〜」x2
 「アシュハドゥアンナ〜、ムハマダン、ラシュ〜ルラ〜」x2
 「ハイヤ〜、アラッサレ〜〜。ハイヤ〜、アラッサレ〜〜」x1
 「ハイヤ〜、アラッルファラ〜。ハイヤ〜、アラッルファラ〜」x1
 「アッラ〜フ、アクバル。アッラ〜フ、アクバル」x1
 「ラ〜、イラ〜ハ、イッララ〜」x1 てなことです。

 これはコ−ラン用の正調アラビア語だとのことです。

 お祈りのあと六時頃までまた寝てしまう人もいます。宿舎の女中さんたちがお祈りの後の朝の薄暗がりの中でムクナ(足まである白い長いスカ−フ)をかぶったまま居間の長椅子に寝ていても、シ−ツにくるまれた死体とまちがえてびっくりしないでください。これがインドネシアの普通の生活ですから。彼女達がどんな格好でどういう風にお祈りをしているか興味がありましたら、邪魔をしないように、部屋の扉をそおっと少し開けて覗いてみるのも良いでしょう。たぶん、白いスカ−フをかぶった頭が、秋遅くのたそがれ時の畑に取り残したキャベツのように見えるかもしれません。

  ジャカルタの郊外の町では、このジルバブをつけた女性を多く見かけます。大体ジルバブは黒が多いのでちょうど「忍者」のように見えるのです。ですから、インドネシアの口の悪い人たちは彼女達を「NINJA」と呼んでいます。郊外の町だけではなく、ジャカルタでもイスラム系の学校の女性徒の制服はこのNINJA姿で、学校によってその色が違うので、「NINJA PUTIH(白忍者)」「NINJA ABUABU(灰色忍者)」と呼ばれています。
これだけは注意してください!
 男女を問わず、お祈りしている時は自分自身に集中しその中に完全に入りきっていますから、声を掛けたりしないでください。たいして時間がかかるわけではありませんので、待てない「日本教徒」が「待つ」という鍛錬をするには最高の機会だと思えばそれほどストレスが溜まるわけではありませんから。

(続く)
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1998-06-16 修正
2015-03-02 修正
 

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