嗚呼、インドネシア
第102話 ジャワ島の鉄道

まえがき
【背景】
 筆者は1970年代から2020年代まで足しげくインドネシアに通っていた。仕事はダムに関するものが多かったので地方で生活するのがほとんどであった。一般に駐在や出張で来ている日本人の大多数は大都市に住んでいて地方にいくのは旅行だけであるが、筆者はその反対で、あちこちの山の中に「蟄居」しているようなものであった。長期間にわたり滞在したことがあるのはスマトラではアチェ、北スマトラ、西スマトラ、ブンクル、ランプン、ジャワ島ではバンテン、ジャカルタ、西部ジャワ、中部ジャワ、東部ジャワ、南東スラウェシの各州であった。
 インドネシアではジャワ島以外にスマトラ島、スラウェシ島に鉄道があるが、筆者が特に興味を抱いたジャワ島の鉄道についてこの文で述べる。
 出張期間中、現場に行くために車に乗っていると街道沿いに廃線になっている線路が多数あるのに気づいた。また今でもジャワ島では製糖業が盛んであり、サトウキビ運搬用のトロッコ軌道も多々見られた。
 長期出張中に探索した小型の蒸気機関車が沢山ある東部ジャワ州のマディウン付近の製糖工場のトロッコ軌道用蒸気機関車訪問記はこちら。「マディウンの蒸気機関車」
また1980年代のインドネシアの地図には当時既に廃線になった鉄道路線も掲載されていた。
 2025年に「インドネシア情報」という西祥郎さんが開いているウエブサイトに掲載されていた「インドネシア鉄道史」に興味を惹かれ、その記事に図表を付けたりして筆者のウエブサイトに再掲した。図表を付けたりしている内に、同氏が述べていない廃線になった鉄道路線が多々あるのに気づいて、ジャワ島内の鉄道線路について調べてみた。

【日本とインドネシアの鉄道事業の差異】
 日本とインドネシアの鉄道事業には大きな差異がある。日本では線路などのインフラストラクチャーと列車の運行会社がほとんど同じであるが、インドネシアでは鉄道の軌道は国の所有であり維持管理も鉄道総局が、車両とその運行は現在 インドネシア汽車会社PT. Kereta Api Indonesia (PT. KAI) が実施している。従って廃線は国家資産となっている。PT KAI以外にその子会社のCommuter社、ジャカルタの地下鉄以外の民営鉄道は現存しない。
 ジャワ島内の鉄道路線は九つに分割されていてそれぞれ地方鉄道管理局daerah operasi = DAOPに分かれている。
 オランダ時代の鉄道は内陸部から砂糖や農産物を輸出港まで輸送するために建設されたため、各地でいろいろな会社が数多くの路線を運営していた。その大部分が建設費の節約のために低速・軽量の車両を使うトラム線であった。各社の路線を経由するために、Semarang と Yogyakarta間の軌間1,435mmとKarawang付近の軌間600mmの区間を除いて軌間は1,067mmに統一されていた。とはいえトラム線は製糖工場を経由していたのと建設費を節減するために直線部が少なかったため都市間の高速輸送には適していなかった。

【鉄道とトラム線】
 日本では道路上を走らない鉄道線と道路上だけを走る軌道線とに分割されているが、インドネシアの場合はKereta api(鉄道)とTrem(トラム)に分割されていて、前者が日本でいう鉄道であり、後者は軽量鉄道となっている。これ以外に製糖工場でサトウキビ運搬に利用されているトロッコ線がある。このトロッコ線の軌道はDecauville社製が大部分を占めていて、インドネシアの地図でこの名前をよく見かける。
 現役の鉄道路線のほぼすべてはオランダの植民地時代に建設されたものであるのですべてが欧州基準になっている。最初に建設されたSemarang とYogyakarta間は1,435mmの標準軌であったが1940年代初めに改軌されたため、すべての路線は軌間1,067mmに統一,されている。
 大都市近郊区間と主要幹線では自動信号機が利用されているが、その他の路線では腕木式信号機と手動転轍機がいまでも使われているので、まるで博物館のようである。

【電化区間】
 ジャワ島内で電化されている営業区間はジャカルタ近郊のコミューター線と、SoloとYogyakarta間のコミューター線のみである。ジャカルタ近郊電車線はDC1500Vであるので、東京メトロや東横線の中古電車がジャカルタで走っている。こういう電車に乗ると、東京の本社に出勤するような妙な感じがした。
ジャカルタ・ボゴール線の架線はと東京・横浜間のようなダブルカテナリーになっている。これは、戦前に電化されたためであろう。 ジャカルタとスラバヤには市内電車があった。

【インドネシアの行政組織】
 インドネシアの行政組織は大きい方から、州=propinsi、 県=kabupatenと独立市Kotamdanya、郡=kecamatan、Kelurahan=町/村、dusun=集落になっていて、集落の中にもRukunWarga (RW)=町内会の下にRukun Tetangga=隣組があります。従って読者諸兄にとって不自然と思われる部分があると思います。
原文でkotaと表現されていた部分は中規模以上の町の中心地を意味しているので、この文章では町と表現してある。

【その他の注釈】
 この報告書はウエブ上にあるインドネシア語の記事を和訳したものであり、原文が分かりにくいところはそのままにするか注釈を入れた。また明らかに間違えているところも注釈と訂正をいれた。
 地名をカタカナとインドネシア語のアルファベットで示してありますが、この差異は特に意図したものではありません。
 文中のアルファベットで示されている地名をカタカナで示したものを頁末に掲げるので参考にしてください。
 本文が鉄道愛好家の方々の参考になれば幸甚である。
 筆者 田口重久 2026/04/26 訂正2026/4/30


        総目次

第1章       オランダ時代の鉄道

第2章       ジャカルタ市内の鉄道

第3章       ジャカルタ圏の鉄道

第4章       チレボン〜スマラン

第5章       スマラン〜スラバヤ

第6章       ボゴール〜バンドン〜クロヤ

第7章       クロヤ〜ヨグヤカルタ

第8章       ヨグヤカルタ〜スラバヤ

第9章       スラバヤ〜バニュワギ

第10章     マラン〜ブリタル

第11章     マドゥラの鉄道

参考資料
インドネシアの鉄道レール
 

地名の読み方一覧表





  【註】
カタカナで書かれている地名の中の平仮名は日本語にない発音である。

スマラン・ポンチョる:       Lの発音で子音で終わる

ぶドノ:                           日本語の「ブ」と「べ」の間の音

るンプヤがン                  Lの発音と鼻濁音の「が」

文中の地名の綴りの中で旧名はオランダ語表記になっている。独立後オランダ語表記は以下のよう変更された。

 オランダ語  tj dj nj oe j  sj 
 インドネシア語  c j  ny  u   y sy 
 読み方  チ ジャ  ニャ   ウ ヤ  シャ 

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2026-04-27 作成
2026-04-30 追加修正
 

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